2022年1月22日土曜日

言葉は歴史の産物(2)

 つい最近、こういった見出しをネットで見かけた(もちろん、中身には目を通していない)。①「津波注意報で神奈川県 緊急速報メール、誤配信20回」(神奈川新聞)➁ 「高校教師、大学共通テストの自己採点結果などの情報を誤送信 関係のない人物に送付」(リアルライブ)。誤+2字熟語は誤りであるというのは、前回の記事である「言葉は歴史の産物」のコメント欄で口酸っぱく言ってきた。それにも関わらず、その後も、この「誤+2字熟語」といったオカシな言葉をたびたび見かけるので、今回はテーマを、この金のなる木、ではなく誤+2字熟語一本に絞り、それについて述べていくことにしたい。
 郵便などを間違ったところへ配達することを【誤配】というのに対し、電報を間違ったところへ配達することを「誤配達」という。これを見て、多くの方が「なーんだ、アイツは誤+2字熟語は誤りだなどと得意げに語っていたが、誤+2字熟語はちゃんと存在するじゃないか」と思われたかもしれない。しかし、ちょっと待ってほしい。この誤配達という言葉は、(なぜ区別しようとしたのかは分からないが)郵便と電報を区別するために、誤配に達を加えたものであって、もともとは同じ「誤配」だったのである。つまり、この誤配達という言葉は、誤+配達ではなく、誤配+達だというわけである。
 そうであれば、先日、コンコルディアFG(7186)をショートするキッカケとなった「誤配信」という言葉も、誤配+信と解釈できるので正しいのではないかと思われた方が、もしかしたらいるかもしれない。しかし、両者が決定的に異なるのは、その対象物である。配達が郵便物を対象としているのに対し、配信は郵便物でないものを対象にしている。郵便物でないといった曖昧な表現になったのは、この「配信」という言葉が、ここ20年くらいの間にできた新しい言葉で(i-pad が発売された頃くらいか?)、定義が明確でないことによる。
 それにしても、この配信という言葉は、本当によく分からない言葉だ。配信とは一体何なのか?定義が明確でない以上、この言葉が使われるニコニコ生放送や You Tube から意味を抽出するしかないのだが、あれらを見る限り、配信と呼ばれるものは、放送という言葉を用いればよいだけであって、わざわざ配信という言葉を使う必要性は感じられないし、もし【放送】がテレビやラジオのような電波を用いた媒体を指すというのであれば、電子メールよろしく(インター)ネット放送とすればよいだけの話だ。また、音楽の場合は放送というわけにはいかないが、これだってダウンロード・サービスとすれば、それで済む話。いずれにしろ、配信という言葉が対象にしているのは郵便物ではない以上、誤配+信といった解釈は成り立たないと言える。
 ところで、最近、私はニコニコ生放送や You Tube の出演者や視聴者の間で盛んに口にされている「インフルエンサー」という造語が気になってしょうがない。インフルエンサー(爆笑)恐らく、彼(彼女)らは、「影響力のある人物(influence + r)」という意味で用いているのだろうが、influence という単語には、それ自身に「影響力を及ぼす人」といった意味があり、また、そういった人間は勢力家や有力者と呼ばれ、英語では an influencial man と表現される。どうやら警戒すべきはコロナの感染だけではなさそうだ。
 誤配達という言葉は、あくまで誤配の意味を明確にするための超法規的措置だというのは分かった。そうであるならば、私が三菱UFJ FG(8306)をショートするキッカケとなった「誤送信」という誤を含んだ3文字の言葉が成立するためには、やはり、「誤送」という言葉が必要になるわけだが、残念ながら「誤送」という言葉は日本語には存在しない。故に、コチラは「送信ミス」とする他ない(※1)。
 ここで1つ注意したいのは、我々が普段、何とはなしに口にしている「メールを送信する」といったフレーズである。このメールは郵便物を指すわけだが、では【郵便物】とは何かと言えば、それは平たく言えば郵便局がやりとりする手紙や小包などのことである。では、私が送信するメールに郵便局(日本郵政)が介在してるかと言えば、もちろん、そんなことは全くない。我々が書いて送っている文章は、下駄箱の中に入れても相手に届くラブレターの類である以上、メールよりはレターの方がベターだし、もっと言えば、【送信】に相当する transmission は transmission of a message といったコロケーションをつくるのだから、メールではなくメッセージがベストなのである。つまり、「メールを送信する」といったフレーズは誤りで、日本人にもう少し英語の知識があったら、こういった誤りは避けることができたのかもしれない。
 いや、仮に英語の知識があったとしても、この問題に関しては、きっと避けることはできなかっただろう。というのも、このメールというのは、アメリカの会社が提供する映画『ユー・ガット・メール』(※2)の「(E-mail」を単に日本語に訳したに過ぎないものであって、日本人が誤って使い始めたものではないから。今現在、アメリカが日本以上にコロナで苦戦しているのは、この事と無関係ではないだろう。だからこそ、私はこの時期にメールという言葉の誤りに気付いたのだとも言える。それにしても、20年以上も間違った言葉を使わされていたなんて!!
 そういったわけで、今回、私は①誤配信 → 神奈川新聞とともにテレビ神奈川に出資してる横浜銀行の親会社であるFGコンコルディアFG、➁誤送信 → リアルライブを所有するLDHの主要株主であるモルガン・スタンレーの持分法適用会社である三菱UFJ FG(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)をショートしてみることにしたい。果たして、これらの会社(株価)の運命や如何に?


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 なぜ、英語の接頭辞である mis の訳は「誤」ではなく「誤って[た]」なのか。それは、日本語には[誤 + 二字熟語]といった言葉が存在しないからである!
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※1…以前、私はM新聞が誤った記載を「誤記載」とした際、「正しくは誤記載ではなく記載ミス」と指摘して、この新聞社と関係の深いテレビ局の株でいくらか儲けたことがあったが、これは【誤記】とすれば、それで済むのであって、わざわざ「記載ミス」などとすることもない。それにしても、いくら日本の政治がダメだとはいえ、さすがに、国会議事堂の背景に写りこむようにテレビ局の社屋を建てるのは良識が無いというものだろう。民放で真っ先に潰れるのはこの局だと言われて随分経つが、この意見には私も同調せざるをえない。
※2…『ユー・ガット・メール』は非常に泣ける映画だったが、それは、きっと私の大好きなドラマの1つである『夏子の酒』(同じ和久井映見主演の『妹よ』とはエライ違い!)に通じるものがあるからだろう。ノーラ・エフロン監督もこのドラマを見たのかな?