2012年11月18日日曜日

経済学概論①

  つい最近、ユダヤ金融資本から資産を守るためではありませんが(笑)副島隆彦著『新たなる金融危機に向かう世界』を手に取る。米国発の金融危機によって、ドルは崩壊し、世界は不況に陥った。このような不況下にあっては、①政府による財政政策、および②金(実物資産)への投資が重要である。こういったところが、本書に限らず副島経済・金融本にみられる共通のテーマなわけですが、果たして本当にそうなんでしょうか?
 
 

 まず①に関してですが、この人の経済理論というのは、基本的には(サムエルソンを解説した)小室直樹さんそのものです。いわゆるケインジアンですね。確かに、固定相場制であれば、本書でも主張する財政政策中心の理論というのは
有効でしょう。実際、サムエルソンは1960年代に隆盛をきわめました。しかし、日本は1971年のスミソニアン合意の後、1973年にブレトンウッズ体制から変動相場制に移行します。

 変動相場制における理論では、それまでのIS-LMモデルとは異なり、海外部門[rw=世界金利]を考慮しなければなりません。なぜなら、資本はより高い金利を求めて移動するからです。資本が流入すれば、当然、為替レートは増価します。よって、仮に財政出動したとしても、その効果は一時的ということになります。一般に変動相場制においては、財政政策は無効であり(注1)、金融政策が有効だとされています。

 


 財政政策のもととなる国家の予算(注2)というのは、おおまかに言って税金[T]と国債で成り立っています。そのうち景気を構成する消費は〔所得-T〕(可処分所得)と定義されるので、増税は景気回復の邪魔になりかねません。また、国債にしても、国家が政策に使えるのは、歳入から国債の利払い費(これをIPという)を除いた額なので、発行すればするほど利払い費は増え、政策に使える額は限定されてしまう。

 これは国家のスタビライザーとしての機能が果たせなくなることを意味します。「経済的自由権」というのは“積極目的の規制”を受ける
ので(注3)、現在の国の借金から考えたら、仮に財政政策が有効であったとしても、実行するのは難しいでしょう。また、有効である(とされている)金融政策にしても、ただただ金利が下がるのみです。これは預金[S]している国民に対する背信でしょう(企業はほぼ無利子で借入できる!!)。

 中には、さらなる金融緩和を訴えている政治家もいるみたいですが、官僚にバカにされつくしたというのも分かるような気がします(笑)まぁ、頑張ってほしいですが…。それはさて置き、では、一体どうすればいいのでしょう?次回はそれについて触れてみたいと思います。



 注1・・・
 



 注2・・・かつて、政治は「国家経営」であるとのもと、一般会計予算を用いて歴代首相を評価しようと試みたが、どうにもうまくいかない。そんな折、『無策!』(長谷川慶太郎・森木亮の両氏による対談)という本でバランスシートの話が出てきたときには、目からウロコが落ちた。この本では、その他に「ドルは今後も基軸通貨たりうるか?」といった興味深いテーマも扱っている。

 注3・・・副島さんは別の本で「非正規社員を正社員に近づけるのではなく、正社員を非正規社員のレベルまで下げる云々」といったことを口にするおかしなオッサンを批判していましたが、派遣ビジネスというのは、これから何とかしなければいけない大きな社会問題だといえます。


 

 


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