2012年11月25日日曜日

経済学概論②

  国内のマクロ政策では景気回復は如何ともし難いことは、前回確認しました。どうやら、自分の資産は自分で守るほかなさそうです。そこで、次回は②金(実物資産)への投資について触れるわけですが、その前に少しだけ国外に目を向けてみたいと思います。

 世界はこういった状況ですから、オカルト本、失礼、副島本によると、アメリカ大統領はオバマからヒラリーに代わるらしい。BAD COPであるヒラリーが戦争によって景気を刺激するというわけです。しかし、それで本当に景気が回復するんでしょうか?というのも、「昭和30年代以降」、株式投資の世界では、「戦争は売り」というのが常識になっているからです。恐らくこれは、ヘクシャー・オーリン・サムエルソンの定理(注1)によるものではないかと、私なんかは考えています。

 詳しくは『国民のための経済原論Ⅱ』に譲りますが、要するに、これまでレーニンの『帝国主義論』にみられた植民地支配というものが、実は貿易によって解決されることが証明されたわけです。この考え方を背景とした「比較優位説」というのは、相互に依存することを前提としているので、戦争は生産活動にとってマイナスでしかありません
。これは、将来にわたって大きな戦争が起こらないことを意味します。ヒラリー大統領誕生という予言は外れました(注2)。

 このように、我々はいま、相互依存による平和な世界に住んでいます。そこで起きるのは、戦争ではなく“通貨”の問題であり、どうやら不況の原因もここにありそうです
。「輸出国家」である日本にとって、アメリカと中国というのは最大のパートナーなわけですが、この2国に対して円は非常に高い。また、中国にとって日本は最大の輸入相手国なので、日中両国にとって人民元(レンミンビ)が切り上がるのは望ましい(注3)。それにも関わらず、なぜ人民元は切り上がらないのか?

 一見、アメリカが促しているのに対し、中国が必死で抵抗しているといった印象を受ける。しかし、今のままで好都合なのは、実はアメリカなのである。というのも、アメリカは昔から「輸入国家(=国内消費中心)」であり、中国はカナダと並ぶ最大の輸入相手国だからである。切り上げたいと思っているのは、どちらかといえば中国の方だろう。中国は輸入・輸出がほぼ半々なので、元が安いということに、それほどメリットがない。

 また、中国内部の政治といったものも、元の切り上げを阻んでいる。今までの中国経済というのは、元高に肯定的な北京派=共青団系ではなく、否定的な太子党が舵取りをしてきた。この上海閥を中心とした太子党には、海外にドル建ての資産を隠し持っている人間がたくさんいるので、元高を嫌っているというのが本書である。恐らく、これは本当でしょう。アメリカが彼らを支援しているというのも筋が通る。

 アメリカにとって日本はそれほど大きな輸入相手国ではないので、たとえドルが円より安くても、現状維持がいいというのは説明しました。日本はここをどうするのか?(注4)今後の中国の動向とともに注目です。



 注1・・・サムエルソン『経済学』(岩波書店、「初版1948年」)



 注2・・・


 注3・・・あえて入手する必要もないとは思いますが、経済データの簡易版としてなら、本書は利用価値大です。例えば、p.71にある元相場のグラフと日本の株価のグラフ(こちらは本書にない)を比べてみると、面白いかもしれません。もう少ししっかりしたものとしては、財務大臣である(笑)野口悠紀雄さんオススメの『経済統計の「超」読解術』があります。いずれにせよ、金利と物価ぐらいは、いつもチェックするよう心掛けましょう。
 注4・・・この問題を指摘したのは「飛耳長目」が初めてなので、今のところ、日本に対応できる政党はありません。ドルやユーロが安いのは、輸出のための戦略といった理解しかできないようじゃ困るよねぇ(笑)



 


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